まもなく最後を迎えようとしている患者の担当になっている場合、看取りのタイミングをどうするかは医師や看護師にとって重要な問題だ。
たとえばステージ4のガン患者が呼吸状態を悪化させた際に人工呼吸器をつなげて集中治療室で延命する判断をすると、家族の面会が制限されているタイミングに最後を迎える可能性がある。
その一方で回復の見込みがなくなったからといって家族が面会できるタイミングに合わせて人工呼吸器を外したりすると、今度は遺族から非合法の積極的安楽死を主張されて罪に問われるリスクが発生する。
医師や看護師は患者の家族のことを思って看取りのタイミングをコントロールしたのに、罪に問われてしまう可能性があるのは矛盾しているような印象を受けるかもしれないが、日本の法律で安楽死が認められない以上、これは変えられない現実なのだ。
このような問題を起こさないためには、これから最後を迎える患者の意思よりも残される家族の意向をできるだけ尊重することがポイントとなる。
残された家族が、医師や看護師は一生懸命に治療をしてくれた、という印象を抱くことができれば問題が起こることはほとんどないといえる。
むしろ医師や看護師が集中治療室の空き状況などを考慮して患者や家族に説明を行ったとしても、病院側の事情で看取りのタイミングをコントロールしたときに裁判沙汰になってしまうのだ。
患者の最後が近くなればなるほど人工呼吸器の有無から処方薬の副作用まで、その一つひとつに患者だけでなく家族からの同意も得る姿勢が医師や看護師に求められている。